ブックタイトルtakenakadaikudougukan-news_Vol40

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takenakadaikudougukan-news_Vol40

REPORT木工芸における初の人間国宝となった木漆工芸作家・黒田辰たつあき秋が「天衣無縫の作品である」と賞した「我わがたぼん谷盆」は、かつて石川県の山中温泉近くにあった我わがたにむら谷村※1で江戸時代初期以来、生活具として作られた木製の盆です。主にクリの無垢材を用いた刳く り物で、底や側面の内外に丸ノミで平行線を刻みつけているところが特徴です。我谷村ではクリ材の木こば羽板(?こけら板)作りを生業とする人が多く、雪深い山村の冬の仕事としてその余材を使って盆、膳、椀、皿等が作られていたようです。2018年10月に木工作家の森口信一さんを講師にお招きし、我谷盆を作るワークショップを開催しました。森口さんは、京都在住ながらも定期的に山中に通い、近くの風かぜたに谷にアトリエを構え、我谷盆を次世代に継承する活動に力を注いでおられます。ワークショップでは、まず事前に準備いただいたクリの生木の板から好みのものを選び、木きうら裏側に縁の幅(8㎜?1㎝)をフリーハンドで墨付けします※2。さらに縁の線から内側4?5㎜に底の隅の基準となる線を描きます。指を木にあてて罫引のようにすっと線を引くそうです。外側の線を基準に、四隅に4分の1円を描きます。墨付けが終わったら午前中いっぱいをかけて荒彫りをしていきます。まずは四隅のアール部分に3か所ずつ丸ノミを斜めに入れ、繊維を切っていきます。次に平ノミで縁線の直線部分の繊維を切っていきます。次に短辺を手前から順番に、真ん中から左右に振り分けながら丸ノミで彫ります。丸ノミで彫る間隔は平ノミの幅くらいとし、この間の部分を平ノミで落としていきます。底厚が6?7㎜になるまで繰り返し彫っていきます。午後からはいよいよ本彫りです。まずは木こぐち口側(短辺)の縁の内側を丸ノミで彫り、次に底の部分に丸ノミでノミ目をつけていきます。本彫りでは木槌もゴムがつけられた側を使用していきます。底部分のノミ目も真ん中から外側に向かって彫っていきます。次に木こば端側(長辺)の縁を底面のノミ目とつながるように注意しながら彫っていきます。内側が完成したら、丸ノコで外側を75度に落とし、角を平ノミで落とした後、カンナで側面、縁を仕上げます。底面は四方ぞりのカンナで木目に直角に削ります。鉋や小刀を使い面取りし、最後にクリ渋を塗り、乾いたら耐水ペーパーでざらつきをとり完成です。参加者からは「しっかり時間をかけて、普段なかなか聞けない名人のコツを教えてもらい、最後に自分の作品が完成し達成感があった」「一生ものとして使い込んでいきたい」「我谷盆の第一人者の森口さんに教えてもらって大変よかった」といった声が寄せられました。今後も伝統の技にふれられるワークショップを開催していきたいと思いますので、ぜひお楽しみに。黒田辰秋旧蔵の我谷盆古作 個人蔵※1我谷村は昭和34年から始まった我谷ダムの建設により、集落が水没した。 ※2我谷盆は木裏側を彫っていきます。参考文献:『民芸手帖 九月号』1963年、本谷文雄「我谷盆について」石川県立歴史博物館紀要第17号 2005年開催日時:2018年10月4日、5日、10日 9:30?16:30講師:森口信一(木工作家・Shin工房)ワークショップ我谷盆を作ろう11