ブックタイトルtakenakadaikudougukan-news_Vol40

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takenakadaikudougukan-news_Vol40

REPORT2018年8月28日、ソウルから汽車にゆられて2時間。今回は忠清南道禮山郡にある韓国古建築博物館※1で若手棟梁・金ヒョサン氏※2に韓国の大工道具について話を伺った。宮殿建築の棟梁・申シンウンス応秀氏から伺った話(竹中道具館NEWS第34号(2016年1月20日発行)にて紹介)とはまた違う、地方の寺院建築に携わる大工さんならではの話で、その一部を紹介する。?大工道具の仕入先は。私は1987年(19歳)から大工仕事をしています。ここは田舎なので、その頃は、皆、刃は鍛冶屋で買って、柄は硬い欅やチャンチン(香椿)で自ら作ってました。もちろんソウルの清渓川や地方にも多少の専門工具店はあるので、そこで買うこともありますが、買いに行くより作ったほうが早いし、買っても結局それを自分の好みにつくり直します。鑿などは、自ら溶接したり、使っているうちに焼きが甘くなるから、冬の焚火なんかの時、よく燃えるので、その火で焼き入れもするんです。墨壺、罫引、鉋も全部自分の好みに合わせて作ります。80年代までほとんどの道具は、自分で作りました。柄をつくる木は現場で手に入れた固めの木をそれは大事に部屋に保管して、乾燥させます。完全に乾いたら、それを削って墨壺などを作る。基本、仕事が終わった夕方に作業します。墨壺が作れない人は、作れる人に一日の日当を払って頼んだりしていました。夜だけしか作業できないから、墨壺づくりは何日もかかるんです。枠鋸は市場に行くと鋸を作ってくれる職人がいて、その人から買ってました。それも15年前だから、いまもいるかな? 枠鋸の鉄は、製材所に行って、グルグル巻いてある鋸(帯おびのこ鋸)を必要な長さに切って作ってくれました。?韓国の伝統的な鑿は木の柄がなくすべて鉄でできているようですが、使ったことはありますか?ありますね。すべて鉄でできた鑿は布で巻いて必ず木槌で打ちます。そうしないと鉄の振動が手に響くので、一日作業をすると手がパンパンに腫れて筋肉痛になってしまう。昔は鉄が貴重だったから、修理現場から出る大きな釘を加工して鉄鑿を作ったりしてました。道具の手入れは夜。作業時間には作業だけ、準備作業はそれが終わってからです。研ぎ具合は、自分の腕の産毛を光に当てて、刃先で産毛がスーッと剃れたら合格です。?砥石は日本製ですか?日本の砥石は90年代に入ってからですね。それ以前は、そこの市場に行って、青みがかった砥石を買って来て、自分で整えて、研ぐ面が真っすぐでないといけないから、石で真っすぐになるように自分でならして使うんです。つい最近も市場で一本買いました。本当に石を荒く切っただけなので、値段も安いんですよ。韓国の大工道具事情(その2)寺院建築を手がける若手棟梁に聞く※1.1998年10月、寺院建築の棟梁・田興秀(ジョン・フンス)氏(1938年生まれ。韓国国指定重要無形文化財「大木匠」保持者)が私財で建てた博物館。ウェブサイト(日本語有り)http://www.ktam.or.kr ※2.田興秀氏の弟子。1968年生まれ。高校卒業後(19歳)大工の道に進み、29歳で独立。主に新築の寺院建築を40棟ほど手掛ける。皇龍寺九層木塔の模型を制作。インタビューに応じてくれた金棟梁大工歴50年の職人の道具(鑿)10