ブックタイトルtakenakadaikudougukan-news_Vol39

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概要

takenakadaikudougukan-news_Vol39

2011年の春、JR神戸駅に続く地下街の小さなギャラリーで始まった椅子展は、今年で8年目を迎えます。兵庫県内で活動する木工作家が、毎年新作の「一脚」を持ち寄り、来場者にはそれぞれの椅子の座り比べをしてもらうという展示会。2015年からはギャラリーの移転工事に伴い場所を替え、現在の竹中大工道具館で開催をする事になりました。この「一脚展」は、当初から販売を主とせず、アンケートによって来場者の意見を聞くスタイルの展示会として始まりました。なぜなら、木工作家の個展等に並ぶ椅子を前にすると、初めて立ち寄った方々は、まず金額に驚かれ「どうぞ座ってみて下さい」とお勧めしてみても遠慮をされる方がほとんど。「気になさらず」と座ってもらうと「座り心地がいいですね。」や「木の肌触りがつるつるですね。」等と、ほとんどの場合がありがたい事に褒めていただけるのです。しかし、実際にはそれぞれの身長や体型、座り方のくせ等でも感じ方は変わりますし、その椅子の前にあるものが食卓なのか事務机なのかによっても、必要とされる座や背の角度は違ってきます。またデザインにおいても同様に、なかなか本人には言いにくく、指摘したい点があったとしても、グループ展であれば無記名のアンケートという事もあり、忌きたん憚の無い意見を書いてもらえるのです。つまり、座る事を前提としながら、様々な作風の椅子を比較する中で、自身の好みのデザイン、また体に合う椅子とはどのようなものなのか、来場者と共に考えたいという思いから始まった展示会なのです。そしてさらに、小さな木工房の役割とはどのようなものなのか、これらの椅子を通じて探ることはできないでしょうか。例えば大量生産される椅子では、座り心地や安全性、生産性について、企画者やデザイナー、技術者等の様々な人の「眼」を経由し、議論と時間を掛けて店頭に並ぶのに対し、小さな工房で設計される椅子では、どうしてもそこでの作者個人の経験や知識に頼るところとなります。しかしその反面、各依頼主の細やかなオーダーに対応できる部分は大きな強みである上、ある意味、「角かど張った」モノを作れるのではないかと考えるのです。「角」といっても製品の角が尖っているという事ではありません。量産される椅子の場合、完成に向けた流れの中で、生産性や必要以上の安全性を守る、それら多くの「眼」によって、当初の「角」は落とされ、下流に辿り着いた頃には、川底の丸い石のようになったと感じてしまう、そんな一面があるのではないでしょうか。そもそも樹勢の良い樹は、陽の当たるところへと遠慮なく枝を張り、葉を茂らせ、そしてじっくりと幹を太らせていくのです。木の魅力を自由に引き出せる環境にある、小さな木工房の創り手こそ、独自の「眼」を絶え間なく磨き続け、その成長の過程を発表し続けることが必要なのではないでしょうか。これからの「一脚」も是非ご注目ください。木工房が創る椅子。その可能性。一脚展実行委員会1第一回 一脚展開催時の様子(こうべデュオぎゃらりーⅡ) 2第二回出展作品より 驚く程軽量な椅子「CHAIR 2×4」(pf工房) 3第七回出展作品より 欅の一枚板を組み合わせた「欅拭き漆ラウンジチェア」(谺工房)1 2 3第八回 座る・くらべる 一脚展+ プラス 2018会場 竹中大工道具館1Fホール会期 2018年8月28日(火)?9月9日(日)予 定COLUMN8