ブックタイトルtakenakadaikudougukan-news_Vol39

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概要

takenakadaikudougukan-news_Vol39

インドネシアは東西に5,110kmと非常に長く、世界で最も多くの島を有する国であり、その数は13,466にのぼります。そうした環境のなかで200とも300とも言われる民族が独自の文化を築いてきました。その結果、民族ごと、地域ごとに異なる多様な家屋の形式をみることができます。今ではだいぶ少なくなりましたが、かつて住まいの多くは、身近な素材を使い、大工のような専門職によらずに造られてきました。人が住まうということは、安全であるばかりでなく、生活に必要な収穫ができる環境も大切です。選ばれた土地には、その地で生活するために発達した伝統的な行動様式があり、これをアダット(慣習)と呼びます。そのエリアは、インドネシアでは必ずしも行政区分と合致するものではなく、「慣習村」として認識されています。ここでは、そうした慣習で家を造ることについて、技術的な側面からみてみようと思います。本来であれば各地ごとに詳記すべきところですが、あまりに多くの事例があるので、ここでは素材や工法に限定して分類しています。屋根を葺くインドネシアの建物には独特な形状の屋根が多くみられます。船大工が造ったなどという説が登場するほど、家大工の発想を超えた形も見られます。そういった形や空間構成に関する考察は本年の展覧会で解説されますが、ここでは実際に家を造る技術について紹介したいと思います。屋根は家の中でももっとも大きな部分です。そのため、まずは安定して大量に供給できる材料でなくてはなりません。また、耐久年数との関係も重要です。葺き替え周期が短い材料を使う場合は、短期に大量に収穫することが必要です。その分人手もたくさんかかります。そのため、村が共同体として機能していることが必要です。逆に長持ちする材料ならばそういった心配はなくなります。つまり、屋根を見れば、その村がどのような環境にあるのか見えてくるのです。こうした地域で伝統的に屋根にもちいられてきた材料を大別すると、イネ科の植物で葺くもの、ヤシ科の植物を利用するもの、その他の植物材料、瓦となります。そして現代では波板トタンが広まっています。では、つぎに素材別に屋根の造り方を見ていきましょう。イネ科植物は、東南アジア全域ではチガヤが利用されます。とくに農村集落の多い山岳や高原地帯ではヤシ科の植物が乏しいこともあって、チガヤは屋根の代名詞といえるほど普遍的な屋根葺き材料となっています。反対に海岸地帯や小さな島とうしょ嶼では、ヤシ以外の屋根葺き材は見あたりません。ヤシ科の植物では、サゴヤシ、ニッパヤシ、ロンタルヤシ(オウギヤシ)などの葉がよく利用されます。比較的まとまって生育し、材料が入手しやすいことに加え、小葉が大きいことが条件です。どこにでもありそうなココヤシは、実はあまり屋根に適した材料といえないのです。そのほかにも、竹、木板、樹皮、木の葉など、それぞれ地域の生態環境に応じた固有の材料があります。そして、材料は同じでも、地域や民族によって葺き方が異なりまFEATUREスンバ島の慣習家屋東南アジアの家づくり自然素材でつくる建築工法?屋根編2