ブックタイトルtakenakadaikudougukan-news_Vol37

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概要

takenakadaikudougukan-news_Vol37

①瓦の深さそもそも瓦は樋といのように雨水を下に流していく物で、深さが深いほど多くの水を流すことができます。そこで、深さの違いによって瓦を数種類に選り分けておきます。そして浅いものは雨水の少ない屋根の上の方に、深いものはたくさんの雨が流れる軒先近くに用います。これにより、雨水の流量が増えるにしたがって瓦の深さが深くなる、雨漏りのしにくい屋根ができるのです。②瓦のゆがみ瓦の形は左右対称なので、粘土を成形する時にはきっちり左右対称に作ります。しかし焼き上がった時にその形が微妙にゆがんでしまう事があります。この様なゆがみの事を瓦の「行儀」と言い、左右対称な物は「行儀の良い」瓦、歪んでいるのは「行儀の悪い」瓦と言います。本来は真下に流したい雨水が、行儀が悪い瓦では右や左に流れてしまいます。ところが屋根に反りがある場合、屋根面は平面ではなく曲面になります。そしてその曲面に合ったゆがみの瓦を使えば、かえって行儀の良い瓦を使うよりも雨水をスムーズに流す事ができるのです。そのため事前に瓦のゆがみを測定し、行儀の良い瓦を選り分けるだけでなく、行儀の悪い瓦も相応しい位置に葺けるようにしておくのです。最も難しいところ原寸図で屋根の形を決め、選別によって瓦の準備ができたら、いよいよ現場で瓦を葺く作業に入ります。瓦を葺くときに最も難しいのは、瓦を凹凸なく平らに葺いていくことです。そのためいったん葺いた後、横から見て平らかどうか、傾いていないか、何度も確認して直します。「難しそうに見えるところほど実は簡単で、簡単そうなところほど粗あらが見えるもんや。腕が上がれば、その簡単なところの難しさがわかるようになる。」これは山本さんが聞いた、井上新太郎氏の言葉です。これは瓦葺き以外にも通じる教えかもしれません。こうして正しく葺かれた瓦は、縦横の線が通っているだけでなく、斜めから見ても瓦の線が通り、屋根面に美しい模様を描き出します。この模様を出すために、瓦葺き職人はすべての瓦に神経を行き届かせなければならないのです。美しさの秘密瓦を正確に置いていく事が瓦葺きで最も重要ですが、更にポイントごとに瓦を微妙に調整して、屋根の美しさを際立たせる工夫がなされています。ここではその中でも、軒瓦の角度についてご紹介します。軒瓦の正面の紋様部分は、通常は瓦に対して直角に作ります。ところで屋根が反っている場合、隣り合う瓦同士でもその傾きが少しずつ違ってきます。そこへすべて直角の軒瓦を並べてしまうと、屋根の反りに応じて、隣り合う瓦の紋様の面がねじれていってしまうのです。それを避けるため、軒瓦は直角のものだけでなく、鋭角や鈍角のものも作ります。それを傾きに応じて使い分ける事で、屋根面がねじれていながら、軒先の瓦の紋様の面が揃っている、美しい軒反りが生み出されます。おわりに以上、美しい瓦屋根を葺きあげるための工夫の一端をご紹介しました。皆さんも寺院建築の屋根をご覧になる時は、職人が屋根に込めた情熱に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。※展覧会についてはP6をご覧ください。施工中の薬師寺食堂。線が通った平瓦の様子 軒瓦の種類 唐招提寺金堂。軒瓦の面が揃っている3