ブックタイトルtakenakadaikudougukan-news_Vol37

ページ
2/12

このページは takenakadaikudougukan-news_Vol37 の電子ブックに掲載されている2ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

takenakadaikudougukan-news_Vol37

FEATURE朝5時、奈良県生駒市の山本瓦工業本社では、会長の山本清きよかず一さんがお茶出しを始めます。社員の瓦葺き職人の方々は毎朝6時30分に本社に集まり、ミーティングを終えてそれぞれの工事現場に向かいます。そのミーティングで出されるお茶を入れるのが山本さんの毎朝の日課なのです。建設業界では瓦を葺く職人を「屋根屋」、瓦を作る職人を「瓦屋」と呼びます。山本瓦工業はその両方を行う会社です。これまで法隆寺金堂、東大寺大仏殿、薬師寺東塔、唐招提寺金堂など、名だたる古建築の瓦製造・屋根施工を行って来ました。今回はその創業者の山本清一さんからお聞きした話を中心に、瓦屋根の美しさの秘密を探ってみたいと思います。原寸図を描く山本さんは昭和7年、奈良県生駒市で瓦葺き職人だった父親の元に生まれました。14歳で父親に弟子入りし、住宅の瓦葺き職人として修行を始めます。そして昭和28年、20歳の時に、当時文化財の屋根を専門に葺いていた井上新太郎氏に再度弟子入りし、寺社建築の屋根の世界に飛び込む事になるのです。山本さんが弟子入りした井上氏は、様々な点でそれまでの瓦葺き職人とは一線を画していました。中でも最も革新的だったのが、施工に際して原寸図を作成する事でした。かつての瓦葺き職人は瓦の割り付け(瓦の大きさを基準に、屋根面にどの瓦を葺くかを決定する作業のこと)や施工などを全て経験に基づく勘によって行っていました。これに対し井上氏は、全ての瓦の納まりを事前に原寸で描き起こし、それを基に施工を行っていたのです。このため大工や施主も、どんな形の屋根になるのか事前に一目で分かるようになりました。屋根屋が瓦を葺く時も正確に作業する事ができます。井上氏の原寸図作成の技術は山本氏に引き継がれ、さらに今では山本氏が会長を務める一般社団法人日本伝統瓦技術保存会の研修で、多くの若い瓦葺き職人に伝授されています。瓦を選り分けておく仕事の九割は段取りで決まるといわれます。瓦葺きも同様で、事前に丁寧な準備をしておけば、現場で効率良く美しい仕事をする事ができます。その準備の一つが先ほど挙げた「原寸図の作成」、もう一つが「瓦の選別」です。瓦は焼き物なので、同じ規格で作っても焼き上がった時に微妙な形の違いが出てしまいます。しかしそれら形の異なる瓦を適材適所に使えば、かえって屋根の機能や美しさを高める事ができるのです。平瓦の場合は主に次の2点を確認し、選別を行います。|特集| 美しい瓦屋根を葺く唐招提寺金堂鴟尾解体前(右:山本清一氏)平城宮大極殿の原寸図2